個別対応方式の用途区分(賃料収入は”副産物”?実態を踏まえ客観的な諸事情に基づき認定)
本日の気になった事柄です。
税務通信において、以前に当ブログでも取り上げました入居者付きの転売用不動産に係る課税仕入の用途区分について争われた事件の記事がありました。
まずは、こちらの争いの経緯について簡単に説明します。
原告のビジネスモデルは、収益不動産を仕入れ、その資産価値と収益力を向上させる「バリューアップ」と呼ばれるリノベーション等を行った上で、その不動産を転売するものでした。
※ 入居者付マンションであるため、販売までの期間に賃料収入が発生
用途区分に係る判断は、仕入れ日を基準に行います。
原告側は転売用不動産の仕入れを「課税売上対応」に区分し、その消費税額の全額を控除して申告しましたが、税務当局は販売に要するものであるとともに、住宅の貸付けにも要するもので「共通対応」に区分されると指摘し更正処分等を行ったため、原告はその取消しを求め提訴していました。
結果は、「事業者が将来におけるどのような取引のために課税仕入れ等を行ったのかを認定して行うべき」との指摘で、事業者の”業務実態”、”過去の同種の課税仕入れ等や取引内容”など、仕入れ日に存在した客観的な諸事情に基づき認定するとされ、収入割合(本件では不動産の販売収入と賃料収入の総和にたいして平均で5%未満にとどまる)などの点から経済実態を踏まえ、「課税売上対応」とされました。
同様の転売用不動産の用途区分が争われた事件では、税務当局の主張が認められ「共通対応」と判断され、納税者が敗訴したものもあるようで、今後同様の処理を行う場合には、収入割合やビジネスモデルなどの実態を考慮して判定する必要があるため、実務への影響が懸念されています。
今後もこちらの事件については、注目をしていきたいと思います。