耐用年数(仕組みから具体例までわかりやすく説明)
固定資産については、減価償却により毎期規則的に費用として計上されていきます。
この減価償却計算は、定額法や定率法など様々な計算方法がありますが、主に耐用年数を用いて計算していくこととなります。
今回はこの減価償却計算を行う上での基礎である耐用年数について紹介します。
「耐用年数ってなに?」
「耐用年数ってどうやって決まっているの?」
と疑問を感じている人に向けての記事になります。
耐用年数についての理解を深めて、正しい経理処理ができるようにしていきましょう。
1.耐用年数とは
耐用年数は、一言でいえば経済的な使用可能年数となります。
「経済的な」という部分が1つのポイントで、物理的な使用可能年数ではありません。
物理的には使用可能であっても多額の維持費用が発生する、新製品の出現などにより外部環境が変化するといった要因も総合的に勘案された上で決定されています。
この耐用年数は、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の別表に定められている年数に従って計算していくこととなります。
通常の維持管理を行い、通常の作業条件によって使用されることを前提として耐用年数を想定しています。
使用方法が耐用年数に影響する例として、機械及び装置の耐用年数があります。
機械及び装置については、その機械及び装置がどの業種に属するかではなく、その設備の使用状況等からいずれの業種用の設備として通常使用しているかにより耐用年数を判定することになりますので、同じ資産であっても設備の使用状況等が異なれば、耐用年数も異なることになります。
2.中古資産の耐用年数
耐用年数は、新品を取得した場合を前提としたものになります。
そのため、中古資産を取得した場合は、残存耐用年数を見積もることが認められています。
この残存耐用年数の見積もりですが、簡便法による見積もりが一般的です。
(簡便法)
①法定耐用年数の全部を経過した資産
法定耐用年数✕0.2=見積残存年数
②法定耐用年数の一部を経過した資産
(法定耐用年数-経過年数)+経過年数✕0.2=見積残存年数
※ 1年未満の端数が生じたときは、これを切り捨て、その年数が2年に満たない時は2年とします
この簡便法ですが、いくつか注意点もあります。
1つ目は、資産を事業に供するために当該資産について支出した資本的支出の金額が当該資産の取得価額の50%相当額を超える場合です。
この場合は簡便法を使用することができません。
2つ目は、ソフトウエアのような無形減価償却資産を取得した場合です。
この簡便法は、有形減価償却資産についてのみ認められているもので、無形減価償却資産については認められていません。
そのため、この場合も簡便法を使用することができません。
実務でよく見るケースとしては「②法定耐用年数の一部を経過した資産」です。
これをパッと計算して欲しいと依頼されるケースも想定されますので、こちらは暗記して使用できるようにしておきましょう。
「4年落ちの中古車は2年で償却できる」という覚え方が個人的にはオススメです。
(6年-4年)+4年✕0.2=2.8年→2年
3.耐用年数の具体例
耐用年数は、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の別表に定められています。
ここでは耐用年数表の一部を利用して、その見方を具体的に確認していきます。
(建物)
建物の耐用年数表の一部です。
この場合に、鉄筋鉄骨コンクリート造の事務所用の建物の耐用年数は何年が適用されるでしょうか?
答えは「50年」になります。
構造・用途、細目の順番に確認していき、その細目の耐用年数を適用することになります。
建物の場合は、その主要骨格が主にどのような構造によって構成されるかで耐用年数が決まります。
(建物附属設備)
建物附属設備の耐用年数表の一部です。
この場合に、照明設備の耐用年数は何年が適用されるでしょうか?
答えは「15年」になります。
構造・用途、細目の順番に確認していき、その細目の耐用年数を適用することになりますが、細目に記載されているものに該当するものがなければ「その他のもの」となります。
(構築物)
構築物の耐用年数表の一部です。
この場合に、駐車場のアスファルト舗装の耐用年数は何年が適用されるでしょうか?
答えは「10年」になります。
アスファルト舗装の方がコンクリート舗装よりも耐久性が低く、維持するためのコストが高くなります。
このような点が耐用年数にも反映されていますので、合わせて覚えると理解が深まります。
(車両及び運搬具)
車両及び運搬具の耐用年数表の一部です。
この場合に、営業用の社用車の耐用年数は何年が適用されるでしょうか?
答えは「6年」になります。
「自動車(二輪又は三輪自動車を除く。)-その他のもの-その他のもの」で、6年が適用されます。
(工具)
工具の耐用年数表の一部です。
金型などは非常に短い耐用年数となっています。
(器具及び備品)
器具及び備品の耐用年数表の一部です。
主として金属製かどうかで耐用年数が大きく変わってきますので、主要な材質についてはしっかりと確認する必要があります。
また、応接セットなどは1単位として取引される単位ごとに金額や耐用年数の判定を行いますので、 1組がどこまでかも確認しましょう。
その他船舶、航空機など様々な種類があります。
いずれにおいてもこの耐用年数表から耐用年数を判定していくこととなりますので、この耐用年数表を正しく使えるようにしていきましょう。
4.さいごに
耐用年数について紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
減価償却計算を行う上で、耐用年数は必要なものとなります。
減価償却は短いものでは2年、長いものでは50年にもなりますのでその影響が長期にわたります。
そのため、耐用年数を誤って計算してしまった場合には、その解消にも長期を要するケースが多くなります。
どの耐用年数を適用するかについては細心の注意を払い、ミスなく処理を行っていくように進めていきましょう。