サラリーマンAのブログ ~手に職と、ハッピーリタイアを求めて~

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減価償却(税理士試験、法人税法)

減価償却といえば、試験はもちろん、実務でもおそらくすべての人が関わるような論点ではないかと思います。

簿記3級から税理士試験に至るまで、難易度の違いはありますが、常に会計や税務に関する試験の問題として出題されるものとなります。

今回はこの減価償却についてまとめてみました。

減価償却については、税理士試験においても毎回出題されるような内容になりますので、幅広いパターンに対応できるようにし、かつ、解答のスピードを上げていくように心がけましょう。

解答のスピードを上げるには、確かな理解と反復練習が必要になりますので、ここではその理解を深めていきましょう。

 

1.減価償却とは

 

減価償却の意義(会計)

減価償却とは、費用配分の原則に基づいて有形固定資産の取得原価をその耐用期間における各事業年度に配分する手続である。

 

会計は適正な期間損益計算を目的として、資産の取得原価(支出)を所定の方法に従い、その資産を使用する期間にわたって計画的・規則的に費用として配分します。

 

税務は課税の公平を目的として、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準(公正処理基準)に従って課税所得の計算を行いますが、この課税の公平の見地などから償却限度額の計算について細かな規定があります。

減価償却資産の範囲

②償却方法

③取得価額

④耐用年数  など

 

会計と税務における減価償却の目的の違いは、遊休時の取扱いなどを理解する上で役に立ちますので、しっかりと押さえておきましょう。

会計上⇒遊休資産であっても、減価償却を行う必要がある。

税務上⇒遊休資産の償却費は損金に算入されない。ただし、いつでも稼働し得る状態にある、いわゆる稼働休止資産に該当するものに係る償却費は損金に算入できる。

 

会計では、遊休となった固定資産について減損の検討を行いますが、その結果にかかわらず、減価償却を行う必要があります。

これは遊休資産であっても、経済的陳腐化などにより時の経過とともに価値が減少すると考えられるためです。

 

税務では、事業の用に供しているものについて、減価償却を行うことができます。

これは使用などにより価値が減少すると考えられるためです。

必要な維持補修がされておらず、いつでも稼働し得る状態になっていない場合は、償却費の損金算入が認められないと考えられます。

 

2.減価償却資産の意義と償却方法

 

減価償却資産とは棚卸資産、有価証券及び繰延資産以外の資産のうち次のもの(事業のように供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)で償却をすべきものをいいます。

(1)建物

(2)構築物

(3)機械及び装置

(4)車両及び運搬具

(5)その他一定のもの

 

償却方法を選定しなかった場合には、次の償却方法となります。

(1)平成19年3月31日以前に取得

  ①建物以外の有形減価償却資産…旧定率法

  ②鉱業用減価償却資産及び鉱業権…旧生産高比例法

(2)平成19年4月1日以後から平成28年3月31以前に取得

  ①建物以外の有形減価償却資産…定率法

  ②鉱業用減価償却資産及び鉱業権…生産高比例法

(3)平成28年4月1日以後に取得

  ①建物・建物附属設備・構築物以外の有形減価償却資産…定率法

  ②鉱業用減価償却資産及び鉱業権…生産高比例法

 

償却限度額の計算方法

(1)旧定額法

   取得価額✕0.9✕旧定額法の償却率

(2)旧定率法

  (期首簿価+繰越償却超過額)✕旧定率法の償却率

(3)旧生産高比例法

   取得価額✕0.9✕(採掘数量/採掘予定総数量)

(4)定額法

   取得価額✕定額法の償却率

(5)定率法

  (期首簿価+繰越償却超過額)✕(200%または250%)定率法の償却率

(6)生産高比例法

   取得価額✕(採掘数量/採掘予定総数量)

 

3.解答例 

 

~通常パターン(計算式は定率法)~

[償却]

(1)限度

 (期首簿価+繰越償却超過額)✕(200%または250%)定率法の償却率=XXX

(2)超過

  会社上の償却費-(1)=XXX

 

~認容パターン(計算式は定率法)~

[償却]

(1)限度

 (期首簿価+繰越償却超過額)✕(200%または250%)定率法の償却率=XXX

(2)超過

  会社上の償却費-(1)=△XXX

(3)認容

  XXX(認容の場合、(2)△XXXの符号が反転)<繰越償却超過額 ∴XXX

 

4.出題のポイント

 

出題のポイントとしては、次のようなものとなります。

①問題の指示に従って計算できているか。

②資本的支出と修繕費の判定を正しくできているか。

③少額減価償却資産、一括償却資産などの規定を選択適用し、法人有利となるように計算できているか。

 

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

 

①問題の指示に従って計算できているかですが、これは前提となる問題の指示(償却方法、事業供用日、グルーピングなど)を正しく認識して解答することが必要となります。総合問題では、指示が様々な箇所にあります。それをもれなく確認し、ミスなく計算を行うことが求められますので、様々な形式の問題を解き、指示通り解答できるように工夫をするなど反復練習が必要となります。

償却方法⇒償却方法についての選定の届出を行った事実はない、すべての減価償却資産について定額法を選定している

事業供用日⇒取得日と事業供用日が異なる

グルーピング ⇒特別償却を適用した資産は他の資産と通算できない、特別控除や特別償却準備金を選択すれば他の資産と通算できる

 

②資本的支出と修繕費の判定を正しくできているかですが、資本的支出と修繕費のフローチャートへの理解が必要となります。

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新規の固定資産の取得の場合は10万円未満であれば損金に算入可能ですが、修繕費や繰延資産などは20万円未満であれば損金に算入可能と対象金額が異なっていますので、この点には注意が必要です。資本的支出と修繕費のフローチャートの詳細については、別記事でも触れていますのでこちらも見てみてください。

sarari-manna.hatenablog.com

 

③少額減価償却資産、一括償却資産などの規定を選択適用し、法人有利となるように計算できているかですが、まず規定の理解が必要です。規定を理解した上で、会社の経理状況などを加味し、それぞれの規定を組み合わせて、所得金額が最も少なくなるように計算する必要があります。

 

その他にも償却方法の変更、事業年度が1年に満たない場合の償却率など様々な論点があります。

 

問題の指示が様々な箇所にあったり、計算する項目が多かったりと理解していてもミスが発生しやすい項目となりますので、反復練習でミスの傾向をつかみ、ミスを減らしていきましょう。

 

4.メモ 

 

(JV工事の場合の長期大規模工事の判定について)

国税庁への照会に対する回答があります。

www.nta.go.jp

少し長いので、要約するとこのようなニュアンスになるかと思います。

Q.JV工事の場合、長期大規模工事の判定は請負総額ではなく、各社(各構成員)の分配割合でその請負総額を按分して各社に分配される請負金額で判定してもよいか?

A.JVとして一つの契約を締結したものなので、請負総額により長期大規模工事に該当するかどうかを判定することとなるとも考えられます。しかし、次の理由から、各構成員の分配割合に基づきその請負総額を按分して各社に分配される請負金額により判定することが相当であると考えられます。

①「その請負の対価の額が10億円以上であること。」の要件は、小規模な工事についてまで工事進行基準を適用すると(納税者の)事務負担が過重となることを配慮して設けられたものであること。

②JVは、各構成員の契約によって成立するものであり、この共同事業体は法人格を有さず、それ自体は納税義務の主体とならないこと。

③当組合事業から生ずる利益金額又は損失金額については、各構成員に直接帰属することとされており、また、帰属損益額を各事業年度の益金の額又は損金の額に算入する場合、原則として、その組合事業の資産、負債、収益及び費用のすべてについて各構成員の分配割合により計算される額をそれぞれの資産、負債、収益及び費用として認識するものとされていること。

結論として、照会者の判定方法による判定が相当であるとの見解が示されました。

 

法人税基本通達2-4-14

長期大規模工事に該当するかどうかの判定単位

請け負った工事が法第64条第1項《長期大規模工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度》に規定する長期大規模工事に該当するかどうかは、当該工事に係る契約ごとに判定するのであるが、複数の契約書により工事の請負に係る契約が締結されている場合であって、当該契約に至った事情等からみてそれらの契約全体で一の工事を請け負ったと認められる場合には、当該工事に係る契約全体を一の契約として長期大規模工事に該当するかどうかの判定を行うことに留意する。(平10年課法2-7「三」により追加、平12年課法2-7「五」、平14年課法2-1「十」、平30年課法2-8「五」により改正)

(注) 2-1-1(1)に定めるところにより区分した単位を一の取引の単位とすることとした場合には、当該単位により判定を行うことに留意する。

 

法人税法施行令第129条第6項)

内国法人の請負をした長期大規模工事であつて、当該事業年度終了の時において、その着手の日から六月を経過していないもの又はその第三項に規定する進行割合が百分の二十に満たないものに係る法第六十四条第一項の規定の適用については、第三項の規定にかかわらず、当該事業年度の当該長期大規模工事の請負に係る収益の額及び費用の額は、ないものとすることができる。ただし、当該長期大規模工事の請負に係る収益の額及び費用の額につき、その確定した決算において同項に規定する工事進行基準の方法により経理した事業年度以後の事業年度については、この限りでない。

 

工事進行基準と貸倒引当金との関係)

工事進行基準を適用している場合のその工事の目的物を引き渡す前の工事未収金は、一括評価金銭債権に当たるものとなります。

その工事未収金とする金額は、次の方法により計算します。

請負対価✕当期末までに支出する総原価/当期末現在の見積総原価-既に支払われた金額

工事利益の計算と似ていますが、請負対価を使うという点で異なっています。

 

(関連する調整項目)

・工事利益認定損 XXX(別表四 減算留保)

・貸倒引当金繰入超過額 XXX(別表四 加算留保)

・貸倒引当金繰入超過額認容 XXX(別表四 減算留保)

 

 

減価償却についてまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか。

税理士試験を終えたとしても、経理実務でも長く付き合っていくような論点となりますので、得意項目となれば差別化できるポイントだと思います。

減価償却に加え、償却資産税など関連する税金についても押さえていけば、固定資産のプロフェッショナルといわれる存在になれるのではないでしょうか。

プロフェッショナルを目指して、日々勉強をしていきましょう。