サラリーマンAのブログ ~手に職と、ハッピーリタイアを求めて~

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工事の請負(税理士試験、法人税法)

工事の請負と聞くと、会計では建設業会計などあり、やや特殊な論点とされる部分かと思います。

税務でも工事の請負には帰属事業年度の特例というものがあり、これも同じような論点かと思います。

今回はこの工事の請負についてまとめてみました。

税務上は、金額などの一定の基準により長期大規模工事に該当するかどうかで工事進行基準が強制適用となるか、任意適用となるのかを判断していくこととなります。

長期大規模工事の要件を押さえつつ、例外的な取扱いも押さえることができれば解答できると思いますので、しっかりと理解していきましょう。

 

1.長期大規模工事とは

 

長期大規模工事とは、次の要件を満たす工事(製造とソフトウエアの開発を含みます。)をいいます。

①着手日から引渡期日までの期間が1年以上

②請負金額が10億円以上

③請負金額の1/2以上が引渡期日から1年を経過後に支払われるものでないこと

 

こちらが長期大規模工事の要件となりますが、①がほぼ実質的な要件といえるのではないかと思います。

工事期間が1年以上となるものは工事進行基準が適用となるのですが、10億円未満の工事を除くことで実務への配慮をし、支払いが先になるものを除くことで税徴収早期化を防ぎ担税力への配慮をしています。

 

要件を満たせば長期大規模工事に該当し、工事進行基準が強制適用となります。

要件を満たさなければ長期大規模工事以外の工事に該当し、工事進行基準が任意適用となります。

 

2.解答例 

 

[請負]

(1)税務

  ①見積 請負対価-当期末現在の見積総原価=XXX

  ②利益 ①✕当期末までに支出する総原価/当期末現在の見積総原価-前期までに計上した工事利益=XXX

(2)会社

  XXX

(3)調整

 (1)-(2)=XXXor△XXX

  ※ プラスの場合は加算、マイナスの場合は減算

 

3.出題のポイント

 

出題のポイントとしては、次のようなものとなります。

①工事の請負に係る契約から長期大規模工事に該当するかどうかを正しく判定できるか。

②長期大規模工事に該当するかどうかを正しく判定をした上で、法人税法上、工事完成基準又は工事進行基準のいずれが適用されるか判断できるか。

③貸倒引当金との関係を理解しているか。

 

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

 

①工事の請負に係る契約から長期大規模工事に該当するかどうかを正しく判定できるかですが、これは長期大規模工事の意義を理解しておけば、解答に迷うケースは少ないかと思います。長期大規模工事に該当するかどうかの判定は、その工事に係る契約ごとに判定しますので、まずこの原則をしっかりと覚えておきましょう。(例外的な取扱いは「4.メモ」に記載しています。)

 

②長期大規模工事に該当するかどうかを正しく判定をした上で、法人税法上、工事完成基準又は工事進行基準のいずれが適用されるか判断できるかですが、長期大規模工事に該当すれば工事進行基準が強制適用され、長期大規模工事以外の工事に該当すれば工事進行基準が任意適用となりますが、会社の決算の経理状況(工事進行基準の方法により経理しているかどうか)を踏まえ、いずれの方法が適用されるか判断することとなります。ただ、長期大規模工事に該当する場合であっても、工事進行基準を適用しないことができる規定が存在するため、その点には注意が必要です。(詳細は「4.メモ」に記載しています。)

 

③貸倒引当金との関係を理解しているかですが、工事進行基準の場合の論点となります。工事進行基準を適用している場合のその工事の目的物を引き渡す前の工事未収金は、一括評価金銭債権に当たるものとなりますので、これを含めて貸倒引当金の計算を行う必要があります。(詳細は「4.メモ」に記載しています。)

 

4.メモ 

 

(JV工事の場合の長期大規模工事の判定について)

国税庁への照会に対する回答があります。

www.nta.go.jp

少し長いので、要約するとこのようなニュアンスになるかと思います。

Q.JV工事の場合、長期大規模工事の判定は請負総額ではなく、各社(各構成員)の分配割合でその請負総額を按分して各社に分配される請負金額で判定してもよいか?

A.JVとして一つの契約を締結したものなので、請負総額により長期大規模工事に該当するかどうかを判定することとなるとも考えられます。しかし、次の理由から、各構成員の分配割合に基づきその請負総額を按分して各社に分配される請負金額により判定することが相当であると考えられます。

①「その請負の対価の額が10億円以上であること。」の要件は、小規模な工事についてまで工事進行基準を適用すると(納税者の)事務負担が過重となることを配慮して設けられたものであること。

②JVは、各構成員の契約によって成立するものであり、この共同事業体は法人格を有さず、それ自体は納税義務の主体とならないこと。

③当組合事業から生ずる利益金額又は損失金額については、各構成員に直接帰属することとされており、また、帰属損益額を各事業年度の益金の額又は損金の額に算入する場合、原則として、その組合事業の資産、負債、収益及び費用のすべてについて各構成員の分配割合により計算される額をそれぞれの資産、負債、収益及び費用として認識するものとされていること。

結論として、照会者の判定方法による判定が相当であるとの見解が示されました。

 

法人税基本通達2-4-14

長期大規模工事に該当するかどうかの判定単位

請け負った工事が法第64条第1項《長期大規模工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度》に規定する長期大規模工事に該当するかどうかは、当該工事に係る契約ごとに判定するのであるが、複数の契約書により工事の請負に係る契約が締結されている場合であって、当該契約に至った事情等からみてそれらの契約全体で一の工事を請け負ったと認められる場合には、当該工事に係る契約全体を一の契約として長期大規模工事に該当するかどうかの判定を行うことに留意する。(平10年課法2-7「三」により追加、平12年課法2-7「五」、平14年課法2-1「十」、平30年課法2-8「五」により改正)

(注) 2-1-1(1)に定めるところにより区分した単位を一の取引の単位とすることとした場合には、当該単位により判定を行うことに留意する。

 

法人税法施行令第129条第6項)

内国法人の請負をした長期大規模工事であつて、当該事業年度終了の時において、その着手の日から六月を経過していないもの又はその第三項に規定する進行割合が百分の二十に満たないものに係る法第六十四条第一項の規定の適用については、第三項の規定にかかわらず、当該事業年度の当該長期大規模工事の請負に係る収益の額及び費用の額は、ないものとすることができる。ただし、当該長期大規模工事の請負に係る収益の額及び費用の額につき、その確定した決算において同項に規定する工事進行基準の方法により経理した事業年度以後の事業年度については、この限りでない。

 

工事進行基準と貸倒引当金との関係)

工事進行基準を適用している場合のその工事の目的物を引き渡す前の工事未収金は、一括評価金銭債権に当たるものとなります。

その工事未収金とする金額は、次の方法により計算します。

請負対価✕当期末までに支出する総原価/当期末現在の見積総原価-既に支払われた金額

工事利益の計算と似ていますが、請負対価を使うという点で異なっています。

 

(関連する調整項目)

・工事利益認定損 XXX(別表四 減算留保)

・貸倒引当金繰入超過額 XXX(別表四 加算留保)

・貸倒引当金繰入超過額認容 XXX(別表四 減算留保)

 

 

工事の請負についてまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか。

税理士試験への対応ということであればここに記載している論点で足りるのではないかと思いますが、工事の請負の範囲、契約の意義、長期大規模工事の着手の日等の判定など経理実務をする上ではまだまだ細かな論点がありそうです。

まず大枠を捉えて、その後細かな論点まで押さえていけば、プロフェッショナルになれると思いますので、日々勉強をしていきましょう。