サラリーマンAのブログ ~手に職と、ハッピーリタイアを求めて~

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資本的支出と修繕費のフローチャートによる判定

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経理実務において頭を悩まされる論点の1つである資本的支出と修繕費の判定。

資本的支出となれば固定資産計上となるため、可能であれば費用計上となる修繕費で処理をしたいですが、修繕費として処理をしていて税務調査で指摘を受けるような事態は避けたい…このように悩みながら処理されている方も多いかと思います。

このページではこの資本的支出と修繕費の内容、そして実際のフローチャートを紹介しています。

「資本的支出と修繕費の区分がわからない。」

「資本的支出と修繕費の区分を知りたい。」

という方に向けて記載している記事となります

ぜひ日常業務の参考にしていただけましたらと思います。

 

 

1.資本的支出とは

 

まず、資本的支出の意義を確認していきましょう。

資本的支出とは、修理等いずれの名義をもってするかを問わず、保有する固定資産について支出する金額で、①使用可能期間の延長、②価値の増加に該当するものをいう。新規資産の取得とは区別されており、新規資産の取得は量的支出(建物の増築・構築物の延長等)、資本的支出は質的支出(用途変更のための模様替え・新たな機能の付加等)を想定しています。資本的支出は、その支出を固定資産として計上し、固定資産の減価償却費として当期以降の損金に算入します。

資本的支出の例示として国税庁HPで紹介されているものは次の通りです。

①建物の避難階段の取付等物理的に付加した部分に係る費用の額

②用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した費用の額

③機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合のその取替えに要した費用の額のうち通常の取替えの場合にその取替えに要すると認められる費用の額を超える部分の金額

(注) 建物の増築、構築物の拡張、延長等は建物等の取得に当たる。

③に該当するような場合には、通常の取替費用(同等の品質等の部分品と取り替えた場合の費用)と実際に掛かった費用との差額を資本的支出として適正に区分する必要があるため、通常の取替費用に係る見積書等を入手し、保管しておく必要があります。

 

 

2.修繕費とは

 

次に、修繕費の意義を確認していきましょう。

修繕費とは、固定資産の修理、改良等のために支出した費用で、①固定資産の通常の維持管理のため、または②き損した固定資産につきその原状を回復するためのものをいう。通常の維持管理費原状回復費の2つが修繕費に該当します。修繕費は、その支出を一時費用として計上し、当期の損金に算入します。

修繕費の例示として国税庁HPで紹介されているものは次の通りです。

①建物の移えい又は解体移築をした場合におけるその移えい又は移築に要した費用の額

②機械装置の移設に要した費用(解体費を含む。)の額

地盤沈下した土地を沈下前の状態に回復するために行う地盛りに要した費用の額

④建物、機械装置等が地盤沈下により海水等の浸害を受けることとなったために行う床上げ、地上げ又は移設に要した費用の額

⑤現に使用している土地の水はけを良くする等のために行う砂利、砕石等の敷設に要した費用の額及び砂利道又は砂利路面に砂利、砕石等を補充するために要した費用の額

蛍光灯をLEDランプへ取り替えるケースが実務ではよく見られます。これは一見すると節電効果などもあり、固定資産の価値を高め、耐久性を増しているとして、資本的支出に該当するのではないかと考えることができそうですが、LEDランプは建物附属設備である照明設備がその効用を発揮するための1つの部品であり、かつ、その部品の性能が高まったことをもって、建物附属設備としての価値等が高まったとまではいえないと考えられるので、取替費用の全額を修繕費として処理します。ただし、建物附属設備についての工事が行われている場合、その費用は建物附属設備の改造費用として資本的支出に該当することが考えられます。

また、既存のソフトウエアについて、法令の改正に伴い、原状の効用を維持するために対応する不可避的な費用(マイナンバー制度導入時の個人番号プログラム追加費用など)についても修繕費として処理します。

 

 

3.フローチャート

 

ここまで資本的支出と修繕費の意義や例を紹介してきましたが、日常業務ではフローチャートによる判断が有効となります。

資本的支出か修繕費かで迷う場合には、下記フローチャートで判断しましょう。

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(補足)

20万円未満または周期の短い費用であるか⇒周期については、おおむね3年以内の周期で修理や改良が行われている場合は短いとされています。

前期末取得価額のおおむね10%以下か⇒ 前期末取得価額は「原始取得価額+前期末までに支出した資本的支出の額」で判定します。(帳簿価額(未償却残高)は関係ありません。)

 

 

4.さいごに

 

資本的支出と修繕費のフローチャートによる判定を紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。

まずはこのフローチャートによる判定を行い、判断に迷うようなものがあれば、資本的支出と修繕費の意義に照らして、その実態により判断を行っていくような流れとなります。

当初においては、1つ1つの判断に時間がかかることも多いですが、しっかりと悩みながら判断していきましょう。

その悩んだ経験が、次回の判断ではきっと役に立つはずです。

経理のプロフェッショナルへの道に近道はありませんので、一歩ずつ着実に前に進んでいきましょう。