サラリーマンAのブログ ~手に職と、ハッピーリタイアを求めて~

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受取配当等の益金不算入額①(税理士試験、法人税法)

企業は様々な目的により株式などを保有しています。

時価の変動により利益を得ること、満期まで保有することにより利息と償還額を受け取ること、他企業への影響力を行使することなどが目的としてあげられます。

これら以外にも、敵対的買収の回避や系列関係の維持、取引関係の強化などを目的として企業の間で互いの株式を保有する関係も存在します。

今回はこの株式などを保有している場合の論点の1つである受取配当等の益金不算入額についてまとめてみました。

この論点は実務でも触れる機会が多いものとなりますので、解答できるだけでなく、実務でも使えるようにしていきましょう。

解答例は部分点がもらえるように丁寧に記載していますが、解答を合わせられる簡単な内容であれば、省略して他の問題に時間を充てていきます。

解答を省略する際には、理論で覚える条文を意識して記入していけばOKです。

 

1.配当等とは

 

益金不算入の対象となる配当等の額は、次の金額をいいます。ただし、①の金額のうち、外国法人等から受けるものなどを除きます。

①剰余金の配当等の額又は特定株式投資信託(外国株価指数連動型特定株式投資信託を除く。)の収益の分配の額

投資信託及び投資法人に関する法律に規定する金銭の分配の額

特定目的会社が行う金銭の分配の額

 

具体的には、中間配当や期末配当、出資分量配当金などが該当します。

 

2.株式等の区分

 

完全子法人株式等

配当等の額の計算期間の初日から末日まで継続して完全支配関係がある株式をいいます。

この区分に該当した場合、配当金の全額が益金不算入とされます。

 

関連法人株式等

配当等の額の計算期間の初日から末日まで継続して発行済株式の1/3超を所有している株式をいいます。

この区分に該当した場合、配当金から負債利子を控除した金額が益金不算入とされます。

 

その他の株式等

完全子法人株式等、関連法人株式等、非支配目的株式等以外の株式をいいます。

この区分に該当した場合、配当金の50%が益金不算入とされます。

 

非支配目的株式等

配当等の基準日における発行済株式の所有割合が5%以下である株式をいいます。

この区分に該当した場合、配当金の20%が益金不算入とされます。

 

3.解答例 

 

[受配]

(1)配当等

  ①完全 XXX

  ②関連  XXX

  ③その他  XXX

  ④非支配  XXX

(2)負債利子

  ①原則

  (イ)支払利子  XXX

  (ロ)株式

    ㋑XXX

    ㋺XXX

    ㋩㋑+㋺=XXX

  (ハ)総資産

    ㋑XXX

    ㋺XXX

    ㋩㋑+㋺=XXX

  (ニ)(イ)✕(ロ)/(ハ)=XXX

  ②簡便

  (イ)支払利子  XXX

  (ロ)割合 XXX+XXX/XXX+XXX=XXX→XXX(小数点以下3位未満切捨)

  (ハ)(イ)✕(ロ)=XXX

  ③①>② ∴①

(3)不算入

 (1)①+((1)②-(2))+(1)③✕50%+(1)④✕20%=XXX

 

4.出題のポイント

 

出題のポイントとしては、次のようなものとなります。

①益金不算入となる配当等の範囲を正しく判断できているか。

②株式等の区分を正しく判断できているか。

③短期所有株式等に係る配当等を除外できているか。

④負債利子の計算を正しくできているか。

 

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

 

①益金不算入となる配当等の範囲を正しく判断できているかですが、公社債の利子、事業分量配当金など配当等の範囲に含まれないものを正しく判断して解答する必要があります。事業分量配当金と似ているもので配当等の範囲に含まれる出資分量配当金がありますので注意が必要です。事業分量配当金は、支払側で出資者が利用した事業の分量に応じて分配する金額は損金算入が可能となっているため、配当等の範囲に含まれません。

 

②株式等の区分を正しく判断できているかですが、完全子法人株式等と関連法人株式等では、計算期間を理解しているかどうかを問われます。前期に無配であった場合、1年内に設立された法人の場合などの計算期間を正しく計算して解答する必要があります。その他の株式等と非支配目的株式等では、所有割合を理解しているかどうかを問われます。非支配目的株式等が5%以下で、関連法人株式等が1/3超の所有割合ですので、ここを理解していれば、その他の株式等を間違えることはありませんので、非支配目的株式等と関連法人株式等の所有割合についてはしっかりと覚えておきましょう。

 

③短期所有株式等に係る配当等を除外できているかですが、基準日付近で売買した株式については適用除外の規定がありますので、この計算が正しくできているかどうかを問われます。ここについては、別記事でまとめていますので、こちらを確認してください。

sarari-manna.hatenablog.com

 

④負債利子の計算を正しくできているかですが、大きく2つの論点があります。

まず1つは、支払利子総額の範囲を理解しているかどうかです。支払利子や利息的な性格のものは原則含まれるのですが、売上割引料などは含まれないので注意が必要です。

もう1つは、原則法と簡便法の計算を理解しているかどうかです。原則法の計算では総資産の帳簿価額を使用しますが、計算の際に圧縮積立金と特別償却準備金は控除し、貸倒引当金が総資産の帳簿価額に含まれている場合にはプラスする必要があります。簡便法の計算では控除割合を使用しますが、基準年度が平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始した各事業年度となりますので、こちらを覚える必要があります。原則法と簡便法のいずれでも支払利子総額の金額を使用しますので、解答を合わせようと考えた場合には、支払利子総額を合わせることが大前提となります。

 

5.メモ 

 

(制度の趣旨・成り立ち)

法人擬制説にもとづき、二重課税を排除するために受取配当金の益金不算入の規定が設けられている。

 

(法人擬制説)

法人税の性格の考え方の1つで、法人は個人株主の集合体であるので、法人の所得は最終的には配当を通じて個人に帰属することになり、単なる中継地点であるというもの。そのため、法人税所得税の前払いという性格を持つと考えるために、法人と個人株主との間の二重課税をなくさなければならない。

 

(法人実在説)

法人税の性格の考え方の1つで、法人は独自の意思で行動するものであり、個人株主とは独立した存在であるというもの。そのため、法人税所得税との間には関連性が無く、法人と個人株主との間には、二重課税の問題は存在しない。

 

(株式等の区分の注意)

非支配目的株式等をその他の株式等として計算するケースが見受けられ、国税庁より注意喚起が発表されている

www.nta.go.jp

 

法人税基本通達3-2-1)

法第23条第4項《負債利子の控除》に規定する「支払う負債の利子」には、次に掲げるようなものを含むことに留意する。(昭50年直法2-21「9」、平5年課法2-1「二」、平12年課法2-7「九」、平15年課法2-7「十二」、平23年課法2-17「九」により改正)

(1) 受取手形の手形金額と当該受取手形の割引による受領金額との差額を手形売却損として処理している場合の当該差額(手形に含まれる金利相当額を会計上別処理する方式を採用している場合には、手形売却損として帳簿上計上していない部分を含む。)

(2) 買掛金を手形によって支払った場合において、相手方に対して当該手形の割引料を負担したときにおけるその負担した割引料相当額

(3) 従業員預り金、営業保証金、敷金その他これらに準ずる預り金の利子

(4) 金融機関の預金利息及び給付ほてん備金繰入額(給付ほてん備金繰入額に準ずる繰入額を含む。)

(5) 相互会社の支払う基金利息

(6) 相互掛金契約により給付を受けた金額が掛け込むべき金額の合計額に満たない場合のその差額に相当する金額

(7) 信用事業を営む協同組合等が支出する事業分量配当のうちその協同組合等が受け入れる預貯金(定期積金を含む。)の額に応じて分配するもの

 

法人税基本通達3-2-3)

割賦販売契約又は延払条件付譲渡契約(これらに類する契約を含む。)によって購入した資産に係る割賦期間分の利息に相当する金額については、法人がこれを当該資産の取得価額に含めないこととした場合に限り、法第23条第4項《負債利子の控除》に規定する「支払う負債の利子」に含めるものとする。(昭55年直法2-8「十二」により追加、平15年課法2-7「十二」、平19年課法2-17「八」により改正)

(注) 法第64条の2第1項《リース取引に係る所得の金額の計算》に規定するリース資産について、賃借人がリース料の額の合計額のうち利息相当額をその取得価額に含めないこととしている場合の当該利息相当額についても、同様とする。

 

法人税基本通達3-2-4の2)

固定資産その他の資産の取得価額に算入した負債の利子又は繰延資産として経理した負債の利子であっても、当該事業年度において支払ったものは、法第23条第4項《負債利子の控除》に規定する「当該事業年度において支払う負債の利子」に含まれることに留意する。(昭55年直法2-8「十二」、平15年課法2-7「十二」、平19年課法2-17「八」により改正)

(注) 令第136条の2第1項《金銭債務に係る債務者の償還差益又は償還差損の益金又は損金算入》に規定する満たない部分の金額については、同項の規定により当該事業年度の損金の額に算入すべき金額を「当該事業年度において支払う負債の利子」に含める。

 

(支払利子総額に含まれないもの)

法人税基本通達3-2-2に規定する利子税、延滞金(納期限延長に係るもの)

法人税基本通達3-2-3の2に規定する売上割引料

 

(原則法-総資産あん分法)

支払利子総額✕前期末及び当期末における関連法人株式等の簿価合計額(税務上)/前期末及び当期末の総資産の簿価合計額(会社上)

 

(簡便法)

支払利子総額✕関連法人株式等に係る控除割合

※ 控除割合

  基準年度における関連法人株式等に係る原則法により計算した負債利子の額/基準年度における支払利子総額(小数点以下3位未満切捨)

 

(関連する調整項目)

 ・法人税額から控除される所得税額 XXX(別表四 加算社外流出)

 ・特別償却準備金積立超過額 XXX(別表四 加算留保)

 ・受取配当等の益金不算入額 XXX(別表四 減算社外流出※)

 ・有価証券認定損 XXX(別表四 減算留保)

 ・社債等償還差損損金算入額 XXX(別表四 減算留保)

 

 

受取配当等の益金不算入額についてまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか。

論点も多く、解答の際に考えることが多いので、意外とケアレスミスが発生しやすいところだと思いますので、注意して解答していきましょう。

経理実務では、eConsoliTaxなどの税金計算ソフトが計算期間や配当を入力することで、自動的に計算をしてくれるので細かな計算をすることは少ないかも知れません。

ただ、株式等の区分は経理実務でも非常に重要で、完全子法人株式等と関連法人株式等に該当するかどうかは押さえておきましょう。

このいずれかの区分に該当すると考えていて、その他の区分に該当した場合には、税金計算の結果が大きく異なることとなり、結果として資金繰りなどの事業活動に影響することが必至となります。

大事になるようなことを未然に防ぐために、組織再編などで判断に迷う場合には、税の専門家である税理士に相談しておくことがよいでしょう。

非常に論点が多い項目ではありますが、1つ1つ押さえていきましょう。